一度決めたシステムを壊せなくなる理由
業務システム、SaaS、管理ツール、社内フロー。一度導入し、運用が始まったあとで、想定したほど使われていない、業務に合っていない部分が増えてきた、修正や変更が極端に重く感じる、といった違和感が生まれます。
「今さら壊せない」という言葉
それでも、次の言葉が出てきます。「ここまで作ったのに、今さら壊せない」「一度決めた以上、簡単に戻すのは無責任だ」「現場が混乱するから触れない方がいい」。
このとき問題になっているのは、システムの出来不出来ではなく、壊せなくなる構造そのものです。
システムが「判断」から「前提」に変わる瞬間
導入当初の位置づけ
  • 業務を改善するための手段
  • 仮説を検証するための道具
変化が起きる瞬間
  • 運用ルールが固まる
  • 役割や評価と結びつく
  • 説明資料や教育内容に組み込まれる
この時点で、システムは疑う対象ではなく、前提条件として扱われ始めます。
壊せなくなる理由①:人が固定される
担当者の固定化
特定の担当者しか分からない状態になります。
評価との結びつき
その人の評価や役割と直結しています。
依存関係の発生
その人がいないと回らない構造になります。
この状態では、システムを壊す=人を否定するという構図が生まれ、合理性よりも感情と配慮が優先されます。
壊せなくなる理由②:契約とコストが心理化する
1
年契約・長期契約
契約期間の縛りが発生します。
2
初期構築費用
投資した金額が重くのしかかります。
3
説明コスト
社内外への説明負担が増大します。
4
心理的負担
失敗を認めることへの抵抗感が生まれます。
これらが積み重なると、コストは実質的な問題ではなく、「失敗を認めることへの心理的負担」に変わっていきます。結果として、使われていなくても続ける、問題が分かっていても触れない、という選択が正当化されます。
壊せなくなる理由③:変更=混乱という短絡
現場の混乱
システム変更により現場が混乱するという懸念が生まれます。
教育コスト
新しいシステムへの教育にコストがかかります。
生産性の低下
一時的に生産性が落ちることへの恐れがあります。
これ自体は事実です。しかし、混乱をどう扱うか、どこまで許容するかが設計されていないと、変更そのものが「やってはいけないこと」として扱われるようになります。
システムが不可逆になる本当のポイント
人・評価・役割との結びつき
判断更新を許さない契約形態
「戻す」選択肢の不在
一度決めたシステムが壊せなくなるかどうかは、技術的な問題ではありません。これらの要素が重なったとき、不可逆性が生まれます。この状態では、システムを変えることは、判断を更新することではなく、過去を否定する行為として受け取られます。
この判断を考え直すための問い
01
判断の固定化
このシステムは、どの判断を固定化していますか?
02
前提の有効性
その判断は、今も有効な前提に基づいていますか?
03
責任の切り離し
システムを壊すことと、人・評価・責任は切り離されていますか?
04
選択肢の設計
最初から「やめる」選択肢は設計されていましたか?
問題の本質はどこにあるのか
これらの問いに答えられない場合、問題はシステムそのものではなく、システムを前提化してしまった判断構造にある可能性が高いです。
システムは本来、業務を支援するための道具であり、状況に応じて見直し、変更できるものであるべきです。しかし、人・契約・心理的要因が絡み合うことで、柔軟性を失っていきます。
システムと向き合うために
定期的な見直し
システムの有効性を定期的に検証する仕組みを作ります。
責任の分散
特定の人に依存しない運用体制を構築します。
撤退戦略
最初から「やめる」選択肢を設計に組み込みます。
システムを壊せる組織は、判断を更新できる組織です。過去の決定に縛られず、現在の状況に最適な選択ができる柔軟性を持つことが、真の組織力となります。