戻れる経営
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現場要望をすぐツールに落とさないという判断
現場から業務改善の要望が上がると、すぐにツール導入を検討したくなります。しかし、その判断を誤ると、ツールは問題解決の手段ではなく、問題を固定化する装置になってしまいます。
「このツールを入れれば解決する」という声
現場から要望が上がると、次のような提案が出てくることがあります:
この業務には◯◯ツールが合っている
手作業が多いのでSaaSを入れたい
他社ではこのツールを使っている
これらは一見すると合理的で前向きな提案です。しかし、ここでの判断を誤ると、ツールは問題解決の手段ではなく、問題を固定化する装置になります。
ツール導入は「理解」を飛ばしやすい判断
すぐに変化の実感
何かを変えた実感がすぐに得られるため、魅力的に見えます。
説明のしやすさ
ツール導入は具体的で、関係者への説明がしやすい施策です。
対応した印象
現場への対応をしたように見え、満足感を与えやすいです。
しかしその裏で、
「なぜその要望が生まれているのか」
という重要なプロセスが省略されがちです。この理由を分解しないままツールを入れると、本当の原因が分からず、業務の歪みが温存され、別の問題が表に出るという状態になります。
ツールが「要求」を固定してしまう構造
1
一時的な不満
現場の一時的な不満が恒久ルールになってしまいます。
2
業務の固定化
特定業務のやり方が固定され、柔軟性が失われます。
3
後戻りの困難
後から戻す理由を説明しづらくなります。
重要:
ツールは一度入れると前提として扱われるため、仮説段階の要望が確定事項として組織に残るという構造を生みます。
ツール導入前にやるべき「観測」
現場要望が出たとき、まず行うべきはツール選定ではありません。次の観測が必要です:
01
負荷の特定
どの業務で、どんな負荷が出ているかを明確にします。
02
頻度の確認
発生頻度はどれくらいかを測定します。
03
代替案の検討
一時対応で回避できるか、ツール以外の選択肢はないかを探ります。
これを確認せずに導入すると、ツールが問題を解決しているのか、隠しているのか分からない状態になります。
なぜ「とりあえず入れる」が危険なのか
ツール導入は多くの場合「可逆」に見えます。合わなければ解約すればいい、別のツールに乗り換えればいいと考えがちです。
しかし実際には、次のような問題が生じます:
業務フローがツール前提になる
現場の思考がツールに依存する
解約=後退と捉えられる
心理的にも構造的にも戻しづらくなるのです。
観測を経てツールを入れた場合の違い
導入目的が明確
何のために導入するのかが明確になります。
説明責任
使われなかった理由を説明できます。
柔軟な見直し
解約や見直しが前提になります。
ツールは
制度や構造を支える部品
として扱われ、判断の代替にはなりません。
よくある誤解
誤解①:ツールを入れないと現場を無視している
ツールをすぐ入れないことは、現場を軽視することではありません。むしろ、
安易な固定化から現場を守る判断
です。
誤解②:ツール導入は後戻りできる
金銭的には戻れても、業務の前提や思考の前提は簡単には戻りません。一度形成された依存関係は、想像以上に強固なものです。
この判断で、最後に確認したい問い
ツール導入を検討する前に、次の問いに答えられるか確認してください:
これは構造の問題か、一時的な不満か
根本的な構造の問題なのか、一時的な状況による不満なのかを見極めます。
ツール以外で観測できる余地はないか
他の方法で状況を把握し、検証する手段がないか探ります。
導入しなかった場合、致命的か
ツールを導入しないことで、本当に致命的な問題が生じるのか評価します。
これらに答えられない場合、現場要望はまだツールに落とす段階ではない可能性があります。
まとめ
ツールの位置づけ
ツールは問題解決の代替にならない
要望の性質
現場要望は仮説であり、確定事項ではない
観測の重要性
観測を飛ばすと、判断が固定される
現場の声に応える速さより、固定しない慎重さ
それが、この判断の核心です。