例外対応をシステムで吸収し続けた末路
例外が発生するたびに、フラグを追加し、条件分岐を増やし、特別ルールを組み込む。こうして例外をすべてシステムで吸収し続ける組織があります。短期的には現場の混乱を抑え、顧客対応が止まらないため「うまく対応できている」ように見えます。しかしこの選択は、組織を静かに追い詰めていきます。
例外吸収は「判断を先送りする装置」になる
なぜ例外が起きたのか
根本原因を問わないまま、技術的対応で事態を収める姿勢が続きます。
原則は何だったのか
本来の業務原則が見失われ、例外が常態化していきます。
原則を変えるべきか
判断を蓄積せず、原則が更新されない状態に陥ります。
例外をシステムで吸収するとは、例外そのものを判断対象から外すという意味でもあります。この姿勢が続くと、原則が更新されず、判断が蓄積されないという状態になります。
システムが複雑化する3つの段階
例外対応をシステムで吸収し続けると、段階的に組織とシステムが崩壊していきます。それぞれの段階で何が起きるのかを見ていきましょう。
例外が「設定項目」になる
最初は一時的な対応として扱われた例外が、チェックボックスや管理画面のオプションとして残り始めます。この時点で、例外は「存在してよい前提」になります。
例外が「前提条件」になる
例外が増えると、通常フローより例外フローの方が多くなり、新人が理解できない状態になります。システムは原則ではなく、例外を前提に動くようになります。
誰も全体を説明できなくなる
最終的には、なぜこの仕様になっているのか、どの条件で何が起きるのかを誰も説明できない状態に陥ります。改修が怖く、触らない方が安全という空気が支配します。
第1段階:例外が「設定項目」になる
最初は、例外は一時的な対応として扱われます。しかしやがて、チェックボックスや管理画面のオプションとして残り始めます。
この時点で、例外は「存在してよい前提」になります。一時的な対応が恒久的な機能として定着し、システムの複雑化が始まります。
例外は「存在してよい前提」になる
第2段階:例外が「前提条件」になる
例外が増えると、通常フローより例外フローの方が多い状態になります。新人が理解できず、システムは原則ではなく、例外を前提に動くようになります。
通常フローの逆転
例外処理が主流となり、本来の業務フローが見えなくなります。
新人の理解困難
業務の全体像を把握することが極めて困難になります。
例外前提の設計
システムが原則ではなく例外を中心に構築されていきます。
第3段階:誰も全体を説明できなくなる
説明不可能な状態
  • なぜこの仕様になっているのか
  • どの条件で何が起きるのか
  • 誰が判断したのか
これらを誰も説明できない状態に陥ります。
恐怖による停滞
  • 改修が怖い
  • 触らない方が安全
  • 変更のリスクが読めない
この空気が組織を支配します。
システム吸収を続けた結果、何が起きるか
例外対応をシステムで吸収し続けた結果、次の問題が同時に発生します。システムは存在していても、判断の軸が存在しない状態です。
業務の原則が消える
本来の業務ルールや判断基準が見えなくなり、組織の方向性が失われます。
判断理由が記録されない
なぜその対応をしたのか、誰が決めたのかが残らず、ナレッジが蓄積されません。
顧客価値の基準が曖昧になる
何を優先すべきか、顧客にとって何が重要かの判断軸が不明確になります。
「顧客対応を止めない」との違い
顧客対応を止めない
一時的に例外対応をすることは合理的です。顧客への影響を最小限に抑えます。
例外をずっと残し続ける
その例外をずっとシステムに残し続けることは、判断放棄に近づきます。
重要なのは、顧客対応を止めないことと、原則を更新しないことは同義ではないという点です。一時的な対応と恒久的な放置は全く異なります。
よくある誤解
誤解①:システムで吸収しているから安全
安全に見えるだけで、実際には誰も判断していない、誰も責任を持っていない状態になっている可能性があります。表面的な安定は、深刻な問題を隠しているだけかもしれません。
誤解②:今は問題が起きていない
問題は、起きてからでは遅い領域に蓄積されています。見えないところで複雑性が増大し、ある日突然、取り返しのつかない事態を招きます。
この判断で、最後に確認したい問い
この例外は、いつ原則に統合する想定か
一時的な対応をいつまでに恒久的な解決に変えるのか、明確な計画はありますか。
原則を更新する判断は、誰が担っているか
業務ルールを見直し、更新する責任者は明確に定義されていますか。
例外が判断として記録されているか
なぜその対応をしたのか、判断の理由と経緯は文書化されていますか。
これらに答えられない場合、システムが判断の代替になっている可能性があります。

まとめ
  • 例外をシステムで吸収すると、判断が消える
  • 判断が消えると、原則が更新されない
  • 原則なきシステムは、複雑化し続ける
システムで例外を処理しているか、判断を先送りしているか。それを見極めることが、この判断の核心です。