役職を与えるか、役割だけにするか
組織がある程度の人数になると、指示系統が曖昧になり、誰が責任者か分からなくなります。多くの経営者は「そろそろ役職を付けるべきではないか」と考え始めます。
しかし、この判断を誤ると、役職は組織を動かす装置ではなく、組織を止める固定具になってしまいます。
肩書きを付ければ、組織は回るのか
組織の課題
  • 指示系統が曖昧になる
  • 誰が責任者か分からなくなる
  • 現場が経営判断を仰ぎ続ける
経営者の反応
部長、マネージャー、責任者といった役職を付けることで、組織を安定させようとします。一見すると自然な処方箋に見えますが、この判断には慎重さが必要です。
役職が固定するもの
上下関係
役職は単に仕事を任せるだけでなく、人間関係の構造を固定します。
発言の重み
役職者の意見が過度に重視され、自由な議論が制限されます。
判断の正当性
役職そのものが判断の根拠となり、本質的な検証が難しくなります。
一度役職が付くと、判断を変えにくくなり、役職者の顔色をうかがい、役職そのものが目的化するといった現象が起きやすくなります。これは人の問題ではなく、役職という制度が持つ構造的な作用です。
役職と役割の違い
ここで問うべきは、役職を与えるかどうかではありません。その人に期待しているのは、地位なのか、役割なのかという点です。
役職の性質
  • 恒常的
  • 包括的
  • 人に紐づく
役割の性質
  • 期間限定
  • 業務限定
  • 構造に紐づく
この違いを意識せずに役職を与えると、本来は一時的・限定的な役割が、人と一緒に固定化されてしまうという事態が起こります。
役割だけを先に渡すという設計
01
担当する業務領域
具体的な業務範囲を明確に定義します。
02
判断してよい範囲
どこまで自己判断できるかを明示します。
03
成果として期待する状態
達成すべき目標を具体的に示します。
04
必ず戻す条件・タイミング
役割を見直す基準を設定します。
これらを役職名ではなく、業務と判断の単位で定義します。役割だけを渡すことで、うまくいけば役職化でき、合わなければ役割を変えられ、判断を構造として検証できる状態を作れます。
役職を先に与えたときの問題
評価の問題
役職を外す=評価を下げる行為になり、柔軟な組織変更が困難になります。
執着の問題
役職者本人が役職に執着し、本来の業務成果よりも地位の維持を優先してしまいます。
人事問題化
組織変更が人の問題として扱われ、構造的な改善が進まなくなります。
結果として、組織設計を変えたくても、人の問題として扱われてしまう状態に陥ります。
役割先行で見えてくるもの
役割だけを先に渡すと、次のことが自然に明らかになります。
本当に必要な役職は何か
恒常的に必要な責任範囲が明確になります。
役職でなくても回る業務はどれか
一時的な役割で十分な業務が見えてきます。
役職化すべき責任範囲はどこか
真に役職が必要な領域が特定できます。
多くの場合、役職が必要なのではなく、判断の置き場が必要だったという結論に至ります。
よくある誤解
誤解①
役職がないと責任感が生まれない
責任感は、肩書きから生まれるものではありません。期待が明確か、成果が検証されるかによって生まれます。
誤解②
役職を付けないと組織が成長しない
役職は成長の結果であって、成長の原因ではありません。順序を誤ると、役職が成長を止めます。
最後に確認したい問い
恒常性の確認
この役職は、今後も恒常的に必要でしょうか。一時的なニーズを恒久的な役職にしていませんか。
固定化の確認
一時的な役割を、人と一緒に固定していないでしょうか。柔軟性は保たれていますか。
可逆性の確認
役割だけに戻す余地は残っているでしょうか。組織変更の自由度は確保されていますか。
これらに答えられない場合、役職を与えるのはまだ早いと言えます。
判断を戻せる形で任せているか
役職は関係性を一気に固定する
一度与えると、変更が困難になる構造的な性質を持っています。
役割は判断を検証可能にする
期間限定・業務限定の性質により、柔軟な組織運営が可能になります。
先に与えるべきは役職ではなく役割
役割を通じて検証し、必要性が確認されてから役職化することが重要です。
役職を与えるかどうかではなく、判断を戻せる形で任せているか。それが、この判断パターンの核心です。