一時的混乱が許容されるリスク設計
進め方を変える。体制や役割を組み替える。新しい仕組みやルールを導入する。こうした局面では、必ず「混乱が起きたらどうするのか」という問いが浮かびます。
この判断が問題になる場面
組織変革の局面では、次のような問いが必ず浮かびます。
  • 混乱が起きたらどうするのか
  • 失敗したときのリスクは誰が負うのか
  • どこまで許容してよいのか
ここで多くの組織は、混乱を起こさない設計、失敗しない設計を目指そうとします。
しかし実際に問うべきなのは、混乱が起きたとき、それを"耐えられる形"になっているかという点です。
混乱を完全に排除しようとする姿勢そのものが、別のリスクを生み出す可能性があります。
「混乱を避ける設計」が生む別のリスク
変更範囲の縮小
変更範囲を極端に小さくすることで、実態が分からないまま進む状態を作りやすくなります。
権限の固定化
人や権限を先に固定することで、問題が表に出る余地がなくなります。
ルールの硬直化
契約やルールを一気に固めることで、柔軟な対応が困難になります。

短期的には安定しますが、小さな混乱を避けた代わりに、大きな不可逆リスクを抱えることになります。
一時的混乱が致命傷になる条件
混乱そのものが問題になるわけではありません。次の条件が重なるとき、混乱は取り返しのつかないリスクに変わります。
1
影響範囲の不明確さ
混乱の影響範囲が把握されていない状態では、問題の広がりを制御できません。
2
判断者の不在
誰が止める・戻す判断をするか決まっていないと、対応が遅れます。
3
責任との直結
混乱が評価や責任と直結していると、問題が隠される傾向があります。
この状態では、混乱が出た瞬間に隠され、問題が拡大するまで表に出ないという現象が起きやすくなります。
混乱が許容されるリスク設計
一時的な混乱が起きても致命傷にならない組織では、次の前提が比較的整理されています。
範囲の限定
混乱が起きる範囲が明確に限定されており、影響を制御できる状態になっています。
観測ポイント
混乱が起きたときの観測ポイントが決まっており、状況を把握できます。
判断基準
一定条件で止める・戻す判断ができる仕組みが整備されています。
ここで重要なのは、混乱を歓迎しているわけではないという点です。混乱を管理可能なリスクとして扱っているだけです。
リスク設計が機能しない典型パターン
リスク設計が名ばかりになっている場合、次の兆候が見られます。
「様子を見る」の繰り返し
具体的な判断基準がなく、曖昧な状態が続きます。
感情的な判断
止める判断が感情や空気に左右されます。
観測の欠如
混乱が起きても、何を見ればいいか分かりません。

この場合、混乱は許容されているのではなく、放置されている状態になっています。
混乱とリスクを切り分けて考える視点
一時的混乱を許容するかどうかを考える際、本来分けて考えるべき点があります。
1
失われるもの
混乱によって失われるものは何か
2
得られる情報
混乱によって得られる情報は何か
3
回復可能性
その情報は、後から取り戻せるか
4
遮断ポイント
混乱が続いた場合、どこで遮断できるか
これらが整理されていない場合、混乱は"学習機会"ではなく、漠然とした不安要素として扱われてしまいます。
管理可能なリスクとしての混乱
計画
混乱の範囲と影響を事前に想定します。
実行
限定された範囲で変更を実施します。
観測
決められたポイントで状況を把握します。
評価
許容範囲を超えたか判断します。
調整
必要に応じて止める・戻す判断をします。
このサイクルを回すことで、混乱を学習機会として活用できます。
この判断を考え直すための問い
混乱の発生場所
今回想定している混乱は、どこで起きるものか
許容範囲の基準
その混乱が許容範囲を超えたと判断する条件は何か
判断の責任者
混乱が起きたとき、誰が止める判断を引き取るのか
管理の実態
混乱は、リスクとして管理されているか、避けるものとして扱われているか
リスク設計の本質
これらの問いに答えられない場合、問題は混乱そのものではありません。
一時的混乱を前提にしたリスク設計が存在しないことにある可能性が高いのです。
混乱を恐れるのではなく、混乱を管理可能なリスクとして設計する。それが組織変革を成功に導く鍵となります。
リスク設計とは、混乱を排除することではなく、混乱から学び、成長する仕組みを作ることです。

組織の成長には、適切に管理された一時的混乱が不可欠です。重要なのは、その混乱をどう設計し、どう活用するかという視点です。