戻れる経営
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整えてから動くか、可逆的に走るか
組織が次のフェーズに進もうとするとき、ほぼ必ず対立が生まれます。「まだ整っていない。先に設計すべきだ」という声と、「走りながら考えないと、機会を逃す」という声です。
この対立は、スピード感の違いでも、慎重さの違いでもありません。問題は、どの時点で判断を固定化してしまうかが曖昧なまま議論される点にあります。
「整えてから動く」が選ばれる構造
後戻りできない不安
一度動かすと後戻りできないという前提が、整備優先を選ばせます。
混乱への恐れ
混乱が起きると組織が疲弊するという懸念が、慎重さを生みます。
体裁へのこだわり
中途半端な状態を見せるのはリスクだという認識が、完成を求めます。
これらは合理的に見えます。ただし、ここで見落とされやすいのは、何が整えば「完成」なのか、いつ整備を終えたと判断するのかが明確にならないまま、判断そのものが先送りされる点です。
整備が判断停止に変わる瞬間
整えることを優先した結果、次の状態に陥ることがあります。設計が増え続け、実態が見えなくなります。前提条件が変わっても設計を更新できません。動き出した時点で、判断材料が古くなっています。
設計の肥大化
設計が増え続け、実態が見えない状態に陥ります。
更新の停止
前提条件が変わっても設計を更新できなくなります。
判断材料の陳腐化
動き出した時点で、判断材料が古くなっています。
このとき起きているのは、慎重さではなく、判断を先延ばしにするための整備です。
「可逆的に走る」という言葉が孕む誤解
理想の可逆性
「走りながら考える」「まずやってみる」という選択は魅力的に聞こえます。しかし、可逆性を意識しないまま走った場合、実際には後戻りできない状態を作りながら進むことも多いのです。
現実の不可逆性
人を固定的に採用する
解約しにくい契約を結ぶ
元に戻せない仕組みを一気に導入する
判断が不可逆になるポイント
この判断で本当に見るべきなのは、「動くか/動かないか」ではありません。どの要素が不可逆になるか、それは本当に今、固定する必要があるかを見極めることです。
人
雇用・役割・権限は、一度決めると変更が困難です。
契約
期間・解約条件・責任範囲は、後戻り不能になりやすい要素です。
心理的コスト
体裁・説明責任は、見えないコストとして組織を縛ります。
進め方を分解して考える視点
この判断を整理するためには、進め方を次のように分解する必要があります。これらが言語化されていない場合、整えても動けない、動いても戻れないという両方のリスクを同時に抱えることになります。
01
仮置きの範囲
どこまでを仮置きにできるかを明確にします。
02
観測の目的
何を観測するために動くのかを定義します。
03
見直しの条件
何が分かった時点で見直す前提かを設定します。
可逆性の設計という視点
問題は進め方ではなく、可逆性の設計にある可能性が高いのです。整備と実行のどちらを選ぶかではなく、どの要素を固定し、どの要素を流動的に保つかを設計することが重要です。
仮説
実験
観測
見直し
この判断を考え直すための問い
1
固定化される要素
今回の進め方で、固定化される要素は何でしょうか。
2
確定の必要性
それは今、確定させる必要があるものでしょうか。
3
実態情報の目的
走ることで得たい実態情報は何でしょうか。
4
情報の回復可能性
その情報は、後からでも取り戻せるでしょうか。
これらの問いに答えられない場合、問題は進め方ではなく、可逆性の設計にある可能性が高いのです。
両極端を避けるための設計原則
バランスの取れた進め方
整えても動けない、動いても戻れないという両極端を避けるためには、可逆性を意識した設計が必要です。
固定すべき要素と流動的に保つべき要素を明確に区別し、観測と見直しのサイクルを組み込むことで、柔軟性と安定性の両立が可能になります。
判断の質を高めるために
組織が次のフェーズに進むとき、整備と実行のどちらを選ぶかという二項対立に陥りがちです。しかし、本質的な問いは、どの要素を固定し、どの要素を流動的に保つかという可逆性の設計にあります。
慎重な観察
固定化される要素を見極めます。
柔軟な実行
仮置きの範囲を明確にします。
継続的な見直し
観測と改善のサイクルを回します。
可逆性を意識した設計により、整備と実行の対立を超えた、質の高い判断が可能になります。