判断パターン10|人の問題か、設計の問題か
組織でトラブルや停滞が起きたとき、最も早く、そして最も強く出てくる結論があります。「あの人のせいで回らない」という判断です。この判断は分かりやすく、即効性があり、次の行動につなげやすい。しかし同時に、最も多くの問題を見落とす判断でもあります。
「人の問題」は、設計思考を止める
採用し直そう
新しい人材を探して入れ替える
入れ替えよう
現在の担当者を別の人に変更する
教育しよう
スキルアップのための研修を実施する
人の問題として扱うと、組織はこれらの思考に入ります。これ自体が間違いとは限りません。しかし、なぜその人がその判断をしたのかを考えないまま人を入れ替えると、同じ問題が再発し、何度も同じ採用を繰り返すという状態に陥ります。これは、設計を疑う思考が止まっている状態です。
設計の問題として捉えるという判断
設計の問題として捉えるとは、人を責めないことではありません。どんな判断が求められていたか、判断基準は共有されていたか、責任範囲は適切だったかを確認することです。
その人でなくても起きたかどうかを問う判断です。
この視点を持つことで、組織は根本的な問題解決に向かうことができます。人を入れ替えるだけでは解決しない構造的な課題が見えてきます。
人の問題に見える3つの典型パターン
1
判断基準が存在しない
  • 正解が言語化されていない
  • 判断が感覚に委ねられている
この状態では、誰が担当しても結果はばらつきます。
2
責任範囲が曖昧
  • どこまで決めてよいか分からない
  • 失敗したときの戻し方がない
結果として、判断が遅れたり、過剰に保守的になります。
3
設計と現実が乖離している
  • 制度はあるが使われていない
  • 役割が想定と違っている
問題は人ではなく、設計が現実に追いついていないことにあります。
判断を切り分けるための3つの問い
人の問題か、設計の問題かを切り分けるために、次の問いを使います。これらのいずれかが欠けている場合、設計の問題である可能性が高いと言えます。
01
この判断は、誰がやっても迷ったか
02
判断基準は事前に共有されていたか
03
失敗したときの戻し方は設計されていたか
人の問題として扱うべきケース
戻れる経営は、すべてを設計の問題にするわけではありません。明確な基準を逸脱した、意図的にルールを無視した、責任範囲を理解した上での不履行といった場合は、人の問題として扱う判断が必要です。
重要なのは、先に設計を疑ったうえでという順序です。
1
設計を疑う
2
人を評価する
よくある誤解
誤解①:設計の問題にすると甘くなる
設計を見直すことは、責任を曖昧にすることではありません。むしろ、次に同じ失敗を起こさないための最短ルートです。
誤解②:人の問題を認めないと組織が締まらない
組織が締まらない原因は、叱責不足や規律不足ではなく、判断構造の不在であることがほとんどです。
この判断で、最後に確認したい問い
以下の問いに答えられない場合、問題は人ではなく、設計にある可能性が高いです。
この問題は、人が変われば消えるか
担当者を入れ替えることで本当に解決するのかを検証します。
同じ設計で別の人がやっても起きないか
構造的な問題が存在しないかを確認します。
判断基準と責任範囲は明確だったか
組織として必要な情報が共有されていたかを振り返ります。
設計思考が組織を強くする
人を疑う前に、設計を疑えているか。それが、この判断パターンの核心です。
設計の問題として捉えることで、組織は同じ失敗を繰り返さない仕組みを作ることができます。これは単なる優しさではなく、組織の成長と持続可能性を高める戦略的な判断です。

設計を見直すことは、次の失敗を防ぐ最も確実な方法です。
まとめ
1
人の問題という結論は、思考停止になりやすい
即座に人を責めることで、根本的な問題が見えなくなります。
2
設計の問題として見ると、再発防止につながる
構造的な課題を解決することで、持続的な改善が可能になります。
3
重要なのは、切り分けの順序
まず設計を疑い、その上で人を評価するという順序が重要です。
人を疑う前に、設計を疑えているか。それが、この判断パターンの核心です。