役職固定が組織の可逆性を下げる理由
組織が成長する過程で、役職を設ける判断は避けられません。しかし、多くの組織で「一度付けた役職を、外せない」という状態が生まれます。これは偶然ではありません。役職を固定した瞬間に、組織の可逆性は大きく下がるからです。
組織が直面する3つの課題
役職を変えられない
組織構造を変更したいが、既存の役職が障壁となり、変更が困難になります。
人事評価の問題
役職を外すことが評価低下と受け取られ、組織再編が人事問題にすり替わります。
人が先に立つ
組織を組み替えたいのに、人の配置が優先され、業務起点の設計ができません。
役職が固定するもの
本来の目的
役職は、業務上の役割を整理するための制度として設計されています。
実際に固定されるもの
  • 上下関係の構造
  • 発言力の差
  • 評価される前提
  • 人間関係の序列
役職は「業務」ではなく「人間関係」を固定する
一度これが固定されると、組織設計の変更が人格評価や処遇の話にすり替わるため、構造を変えたくても変えられなくなります。
可逆性が失われる3つの構造的理由
01
役職変更=評価変更と受け取られる
役職を外す、下げるという行為は「評価が下がった」と受け取られやすい状況が生まれます。
02
役職に業務が吸着する
本来の職務範囲を超えた判断や暗黙の期待が役職に吸着していきます。
03
組織変更が「人の問題」になる
組織図の変更や業務再配置がすべて「誰をどう扱うか」という話に変わります。
理由①:役職変更が評価変更として受け取られる
本来の意図
  • 組織フェーズの変化
  • 業務構造の変更
  • 合理的な再配置
実際の受け取られ方
  • 評価が下がった
  • 能力不足と判断された
  • 降格処分

この瞬間、役職は可逆性を失います。組織の合理性よりも、個人の感情や評価の問題として扱われるようになるのです。
理由②と③:業務の吸着と人の問題化
業務が吸着
役職に本来の職務範囲を超えた判断や暗黙の期待が集まります。
変更が困難に
役職を変える=業務を奪うという構図が生まれ、再設計が不可能になります。
人の問題化
組織の合理性や業務効率といった観点が後退します。
役職固定が進むと、組織図の変更や業務再配置がすべて「誰をどう扱うか」という話に変わります。これにより、組織の合理性や業務効率といった本来の観点が後退してしまうのです。
可逆性を下げない役職設計の視点
役職は「暫定」と捉える
役職は恒久的なものではなく、組織フェーズに応じて変更可能な暫定的な設計として位置づけます。
役職と役割を切り離す
役職という肩書きと、実際に担う業務上の役割を明確に分離して管理します。
見直し前提を明文化する
役職は定期的に見直されることを組織のルールとして明文化し、共有します。
特に重要なのは、役職を外すことが例外ではなく、通常の選択肢として存在する状態を作ることです。
役職を固定しない組織で起きる変化
組織変更への抵抗が減る
役職変更が通常の選択肢となり、組織再編がスムーズに進みます。
業務起点で配置を考えられる
人ではなく業務を中心に組織設計ができるようになります。
人に依存しにくくなる
特定の個人に依存しない、持続可能な組織構造が実現します。
結果として、組織が「設計対象」として扱えるようになります。これは、組織を戦略的に最適化できる状態を意味します。
よくある誤解を解く
誤解①:役職がないと統率が取れない
統率が取れない原因は、役職不足ではありません。業務定義の不在と判断基準の不明確さが真の原因です。
誤解②:役職は一度付けたら守るべき
役職は人の権利ではなく、組織設計上の道具です。状況が変われば、使い方も変わるべきです。
最後に確認したい3つの問い
1
この役職は、今後も恒常的に必要か
組織の将来を見据えて、本当に必要な役職なのかを問い直します。
2
組織構造が変わったとき、外せるか
環境変化に応じて、柔軟に役職を変更できる状態にあるかを確認します。
3
役職を外す説明を、業務構造でできるか
人事評価ではなく、業務の観点から説明できるかが重要です。

これらに答えられない場合、役職固定が組織の可逆性を下げている可能性があります。

まとめ
  • 役職固定は、人間関係を固定する
  • 人間関係の固定は、組織変更を困難にする
  • 役職は、可逆性を保ったまま扱うべき
組織を変えたいなら、まず役職を疑える状態か。それが、この判断の核心です。