承認を増やすか、判断者を減らすか
組織が拡大すると、「念のため確認を入れたい」「承認を通しておいた方が安心」という声が自然と増えていきます。こうして承認プロセスは少しずつ増えていきますが、あるラインを超えた瞬間、組織は誰も決めなくなり、判断だけが滞留する状態に陥ります。
これはスピードの問題ではありません。判断構造の問題です。
「確認が増えるほど、判断は遅くなる」現象
念のため確認
リスク回避のために確認を入れたいという心理が働きます。
承認で安心
承認を通しておいた方が安心という組織文化が形成されます。
独断を避ける
誰かの独断に見えるのを避けたいという配慮が生まれます。
承認プロセスが増えることで、組織は次第に判断が滞留する状態へと移行していきます。これは単なる効率の問題ではなく、組織の判断構造そのものの問題なのです。
承認を増やす判断は「責任を薄める」判断
承認を増やす目的
  • 判断ミスを避けたい
  • 責任を分散したい
  • 組織として決めた形にしたい
承認プロセスを増やす目的は、多くの場合「安心」です。しかし構造的に見ると、承認を増やす判断は、誰が最終的に決めたのかを曖昧にするという作用を持ちます。
結果として起きること
  • 判断は合議になる
  • 失敗時の検証ができない
  • 次の改善に繋がらない
この状態が固定化されると、組織は学習する機会を失い、同じ問題を繰り返すことになります。
判断が止まる組織で起きていること
全員が「反対しない人」になる
リスクを避けるために、誰も明確な意見を述べなくなります。
誰も「決めた人」にならない
最終的な責任を負う人が不在の状態が続きます。
判断が前例踏襲になる
新しい判断を避け、過去の事例に頼るようになります。
これは現場の姿勢や能力の問題ではありません。判断者を設計しなかった組織側の問題です。承認が多い組織では、これらの現象が同時に起きています。
本質的な分岐点
1
表面的な問い
承認を増やすか、承認を減らすか
2
本質的な問い
誰が決めるかを、明確にするかどうか
ここでの分岐点は、承認の数ではありません。本質的な分岐は、誰が決めるかを明確にするかどうかです。判断者を減らすとは、判断テーマごとに最終決定者を一人決めるという設計なのです。
判断者を減らす設計のポイント
01
この判断は誰が決めるのか
判断テーマごとに最終決定者を明確に定義します。
02
どこまでがその人の判断範囲か
決定権限の範囲を具体的に設定します。
03
どの条件で経営判断に戻すか
エスカレーションの基準を明確にします。
判断者を減らすために必要なのは、複雑な制度ではありません。最低限、これらを決めます。これが明確であれば、承認は最小限で済みます。
承認プロセスが必要になるケース
金額が大きい
大きな投資判断では、複数の視点からの検証が必要です。
リスクが高い
組織に重大な影響を与える可能性がある場合は慎重な判断が求められます。
組織全体に影響する
全社的な方針変更など、広範囲に影響する判断では承認が有効です。
もちろん、すべての承認が悪いわけではありません。こうした判断では、承認は判断の補助線として機能します。問題は、承認が「誰も決めないための装置」になっていることです。
よくある誤解
誤解①
承認を増やせばミスが減る
承認が増えても、判断の質は自動的に上がりません。むしろ、誰も深く考えない、前例だけを見るという状態になりがちです。
誤解②
判断者を一人にすると独裁になる
独裁になるかどうかは、人数ではなく、判断基準が共有されているか、検証と修正ができるかで決まります。
最後に確認したい問い
この判断は、誰が最終的に決めているか
最終決定者が明確になっているかを確認します。
失敗したとき、誰の判断として検証できるか
責任の所在が明確で、検証可能な状態かを確認します。
承認は判断を助けているか、止めていないか
承認プロセスが本来の目的を果たしているかを確認します。
これらに答えられない場合、承認を増やす方向に、構造が歪んでいる可能性があります。
まとめ
承認を増やすと、責任が薄まる
承認プロセスの増加は責任の所在を曖昧にします。
判断者を減らすと、検証可能になる
明確な判断者の設定により、検証と改善が可能になります。
問題は人数ではなく、判断構造
組織の判断構造の設計が本質的な課題です。
判断が遅い組織は、判断者を設計していない。それが、この判断パターンの核心です。