失敗を隠すか、構造化するか
施策や変更を進めた結果、想定していた成果が出なかったとき、組織の反応は二つに分かれます。できるだけ表に出さず早く収束させようとするか、何が起きたのかを切り出し整理しようとするか。
ここで問われているのは、失敗をどう評価するかではなく、失敗をどう扱う構造になっているかです。
この判断が問題になる場面
成果の未達
想定していた成果が出なかった状況に直面したとき
現場の混乱
手戻りや混乱が現場で起きてしまったとき
外部からの指摘
外部・内部から問題点の指摘が入ったとき
こうした出来事が起きたとき、組織は失敗をどう扱うかという重要な判断を迫られます。この判断が、組織の学習能力と成長を大きく左右することになります。
失敗を「隠す」判断の合理性
短期的なメリット
失敗を表に出さない判断には、一見合理的に見える側面があります。
  • 評価や信頼を下げたくない
  • 不要な混乱を広げたくない
  • 責任問題に発展させたくない
表面的な安定
短期的には次のような効果が得られます。
  • 空気は落ち着く
  • 表面上の秩序は保たれる
しかし、この判断が繰り返されると、失敗は消えるが、判断の材料も消えるという状態が積み重なります。
失敗を隠し続けた組織の末路
同じ失敗の繰り返し
同じ種類の失敗が何度も発生する
個人への責任転嫁
問題の原因が人に帰属されやすくなる
情報の沈黙
現場が萎縮し、情報が上がらなくなる

このとき起きているのは、問題解決ではなく、問題露出の回避です。
失敗を「構造化」する組織の特徴
失敗が起きても組織が弱らないケースでは、次の扱いがされています。
前提や設計のズレとして切り出す
失敗は個人の是非ではなく、構造的な問題として扱われます
想定との違いを言語化
何が想定と違ったのかが明確に記録されます
再発条件の整理
同じ失敗を防ぐための条件が整理されます
このとき、失敗は評価対象ではなく、判断更新の素材として残ります。
なぜ失敗は構造化されにくいのか
多くの組織で失敗が扱いづらい理由は、失敗そのものではありません。次の構造があると、失敗は表に出にくくなります。
1
評価との直結
失敗が評価・責任・処遇と直結している
2
修正の否定視
修正や撤回が否定として扱われる
3
メリットの不在
失敗を共有するメリットが見えない
この状態では、失敗を出すこと自体がリスクになり、情報は沈黙します。
失敗が不可逆になるポイント
失敗が学習に変わらず、組織を弱らせるかどうかは、次の条件で分かれます。
1
記録の欠如
失敗が記録されず、記憶に依存している状態
2
主体の不明確さ
判断を更新する主体が不明確である状態
3
責任追及の優先
「なぜ起きたか」より「誰の責任か」が先に問われる状態
この場合、失敗は構造ではなく、過去の出来事として処理されることになります。
構造化する組織と隠す組織の比較
この判断を考え直すための問い
01
想定との違いの特定
今回の失敗は、何が想定と違ったことを示しているか
02
問題の性質の見極め
その違いは、個人の問題か、前提や設計の問題か
03
再発可能性の評価
同じ条件が揃ったら、再び起きるか
04
情報の継承確認
その情報は、次の判断に残っているか
これらに答えられない場合、問題は失敗の有無ではなく、失敗を構造として扱う回路が存在しないことにある可能性が高いです。
失敗を学習に変える組織へ
失敗を隠すか構造化するかという判断は、組織の学習能力を決定づける重要な分岐点です。
失敗を構造化する組織では、失敗は恥ではなく、より良い判断のための貴重な素材となります。問題は失敗そのものではなく、失敗から学ぶ仕組みがあるかどうかです。
組織が成長し続けるためには、失敗を評価対象から判断更新の素材へと転換する構造が不可欠です。
失敗を構造として扱う回路を持つ組織だけが、持続的な成長を実現できます。