重要ポジションを正社員で採用する前に、システムで業務を仮置きするという選択
事業が回り始め、組織が少しずつ複雑になると、必ず出てくる判断があります。「このポジションを任せられる人がいない」。多くの組織は、ここで正社員採用を検討します。しかし、この判断には一つ大きな落とし穴があります。
「人を入れれば解決する」は、本当か?
よくある判断
業務が増えると、すぐに「人を採用しよう」という結論に至ります。しかし、業務の中身が分からないまま、人だけを固定してしまうことには大きなリスクが潜んでいます。
見落とされる問題
正社員を採用した瞬間に固定化されるのは、雇用コストだけではありません。業務の解釈、判断基準、そして組織の前提そのものが固定されてしまうのです。
固定化されるのは「人」ではなく「解釈」
正社員を採用した瞬間に固定化されるのは、雇用コストだけではありません。固定されるのは、その業務は何なのか、どこまで判断してよいのか、失敗したとき何が問題だったのか、という解釈そのものです。
修正の困難
その人を否定する行為になり、業務改善が難しくなります。
評価の問題化
業務改善が人事評価の問題にすり替わってしまいます。
後戻り不能
判断を引き戻すことが極めて難しくなります。

つまり、人ではなく構造が後戻り不能になるのです。
なぜ「システムで仮置きする」という発想が必要か
ここでいう「システム」とは、高機能なSaaSや大規模ツールのことではありません。スプレッドシート、タスク管理ツール、ワークフローの簡易設計といった最低限の仕組みで十分です。
重要なのは、業務を"人から切り離して"置いてみることです。
業務を一度システムに仮置きすることで、判断が発生するポイント、判断頻度と影響範囲、本当に人の裁量が必要な部分、実はルールで処理できる部分が強制的に明らかになります。
業務をシステムに仮置きすると何が起きるか
01
判断ポイントの可視化
判断が発生するポイントが明確になります。
02
頻度と影響の把握
判断頻度と影響範囲が見えてきます。
03
裁量の必要性
本当に人の裁量が必要な部分が分かります。
04
自動化の可能性
実はルールで処理できる部分が判明します。
多くの場合、「思っていたほど、人の判断はいらなかった」という事実が見えてきます。
仮置きの本当の目的は「効率化」ではない
誤解
業務仮置き=効率化施策
本当の目的
  • 業務の実態を観測する
  • 判断構造を露出させる
  • 採用判断を可逆的にする

仮置き期間中に確認すべきなのは、成果ではなく構造です。
よくある誤解と失敗
誤解①:仮置きは採用前提の試用期間
仮置きを「どうせ採る前提」で行うと、結局、業務は曖昧なままです。仮置きは、採用しない判断を含めるための設計です。
誤解②:優秀な人なら、仮置きは不要
優秀な人であればあるほど、業務のブラックボックス化は加速します。その人が辞めたら回らない、何をしているか説明できない。これは、仮置きをしなかった組織側の問題です。
それでも人を採ると決めるなら
業務をシステムで仮置きしたあとであれば、採用判断の質は大きく変わります。この状態での正社員採用は、覚悟ではなく、設計に基づく判断になります。
説明可能
何を任せるのか説明できる
裁量の明確化
どこまでが裁量か切り分けられる
可逆性
合わなかった場合、戻し方が分かっている
この判断で、最後に確認したい問い
緊急性の確認
この業務は、今すぐ人を固定しないと致命的か?
代替手段の検討
人を入れなくても、仕組みで観測できないか?
リスクの特定
採用しなかった場合、何が一番困るのか?
これらに答えられないなら、まず仮置きする余地があるということです。
まとめ:判断は後から考え直せる形になっているか
正社員採用
判断を一気に固定化する
システム仮置き
判断を引き戻すための装置
業務の外部化
人を入れる前に、業務を一度外に出す
どちらを選ぶかではなく、その判断は後から考え直せる形になっているか。それだけを確認するための選択肢です。