業務を属人化させるか、露出させるか
組織が成長する過程で、「あの人しか分からない」という状態が生まれます。短期的には業務が止まらず、スピードも保たれているように見えますが、この状態は組織が自ら判断の可逆性を捨てている状態でもあります。
「あの人しか分からない」という状態
組織が一定規模を超えると、次のような言葉が日常的に使われ始めます。短期的には業務は止まらず、スピードも保たれているように見えます。
しかしこの状態は、組織が自ら判断の可逆性を捨てている状態でもあります。
よく聞かれる言葉
  • 「それは〇〇さんじゃないと分からない」
  • 「一応、あの人が見ているから大丈夫」
  • 「仕組みにするほどでもない」
属人化は「選択の結果」である
業務が属人化すると、しばしば「あの人が優秀すぎる」「周囲が育っていない」と語られます。しかし「戻れる経営」の視点では、属人化は個人の問題ではありません。
業務を露出させなかったという、組織の判断結果です。
業務の中身が見えなくなる
プロセスがブラックボックス化します
判断基準が共有されない
ノウハウが組織に蓄積されません
修正・改善ができなくなる
問題が発見されても対応できません
属人化がもたらす一時的メリット
属人化には、短期的には明確なメリットがあります。だからこそ、忙しい局面では属人化が選ばれやすいのです。
問題は、その選択を「一時的」にできているかです。
説明コストがかからない
いちいち説明する必要がありません
判断が速い
即座に決定を下せます
混乱が起きにくい
安定した運用が可能です
業務を「露出させる」という判断
露出させるとは、業務をマニュアル化することだけを指しません。第三者が追える状態にすることです。
01
どんな判断が行われているか
意思決定のプロセスを明確にします
02
何を根拠に決めているか
判断基準を言語化します
03
例外はどこで発生するか
イレギュラーケースを記録します
露出とは、業務を"共有可能な形"に戻す判断でもあります。
露出させるときに最低限やるべきこと
業務を露出させる際、完璧な設計は必要ありません。最低限、次を行います。
1
業務の流れを書き出す
プロセス全体を可視化します
2
判断ポイントを言語化する
意思決定の基準を明文化します
3
例外対応をメモとして残す
特殊ケースを記録します
これだけでも効果があります
  • 属人化の範囲が明確になります
  • 本当に露出すべき業務が見えてきます
  • 改善の糸口が発見できます
露出させると何が起きるか
業務を露出させると、次の現象が起きがちです。これは失敗ではありません。見えていなかったものが、見えるようになっただけです。
「そんなやり方だったのか」と驚かれる
業務が増えたように感じる
属人化していた人が違和感を持つ

これらの反応は、業務が適切に露出されている証拠です。一時的な混乱を恐れず、プロセスを進めることが重要です。
属人化を選ぶべきケース
戻れる経営は、すべての属人化を否定しません。重要なのは、属人化が「前提」になっていないかです。
実験的な業務
まだ定型化されていない新しい取り組みの場合、一時的な属人化は許容されます。
一時的な負荷対応
緊急時や繁忙期など、短期的な対応が必要な場合は属人化も選択肢です。
高度に専門的な判断
特殊な専門知識が必要な業務では、意図的に属人化を選ぶこともあります。
よくある誤解
誤解①:露出させるとスピードが落ちる
短期的には、説明や記録の分だけ遅く感じるかもしれません。しかし、修正ができる、代替が効く、学習が残るという点で、中長期では圧倒的に速くなります。
誤解②:属人化は悪いこと
属人化そのものが悪なのではありません。意図しているか、戻す前提があるかが重要です。計画的な属人化と無自覚な属人化は全く異なります。
最後に確認したい問い
この判断で、最後に確認したい問いがあります。これらに答えられない場合、業務はすでに「露出させるべき段階」に来ています。
1
この業務は、誰がやっているか説明できるか
担当者と業務内容が明確になっていますか
2
判断基準は共有されているか
意思決定のルールが組織で共有されていますか
3
人が抜けた場合、どう戻すか考えているか
引き継ぎや代替の計画がありますか

まとめ
  • 属人化は短期的な安定を生む
  • 露出は中長期の可逆性を生む
  • 問題は、どちらを選ぶかではない
属人化を選ぶなら、それを戻せる設計になっているか
それが、この判断パターンの核心です。