承認ルートが増え続ける組織が衰退する構造
組織が成長し失敗を経験すると、「次は必ず上長確認を入れよう」「念のため、もう一段承認を通そう」という善意の積み重ねとして承認ルートが増えていきます。
しかし一定点を超えたとき、組織は別の問題を抱え始めます。決断が遅いのではなく、決断できない構造になるのです。これはスピードの問題ではなく、組織構造そのものの問題です。
承認ルート増加は「責任回避構造」を作る
承認が増える目的
承認が増える目的は、多くの場合「安心」です。判断ミスを避けたい、組織として決めた形にしたい、責任を一人に負わせたくないという思いから始まります。
構造的な問題
しかし構造的に見ると、承認ルートの増加は誰も最終責任者にならない、判断は合議になりやすい、失敗時に検証できないという状態を生みます。
結果として、判断の質ではなく、責任の所在が曖昧になる組織が出来上がります。
承認が増え続ける組織で起きる3つの現象
全員が「反対しない人」になる
承認者が多いほど、人は積極的に決めなくなります。反対しなければ責任は負わない、目立つ意見は出さないという心理が働きます。
前例踏襲が最適解になる
承認を通すためには、過去にやったことがあるか、誰かが以前に認めたかが重要になります。前例がある=正しいという価値観が固定されます。
判断が学習につながらない
なぜこの判断になったか、誰がどこを見て決めたかが曖昧になります。失敗しても、次に活かせない状態に陥ります。
無難だが前に進まない判断だけが残る
承認者が多いほど、人は積極的に決めなくなります。反対しなければ責任は負わない、目立つ意見は出さないという心理が働き、無難だが前に進まない判断だけが残ります。
提案
新しいアイデア
多層承認
誰も反対しない
結果
前に進まない
衰退を生む承認構造の特徴
衰退する組織に共通する承認構造には、次の特徴があります。これらが重なると、承認は判断を助けるものではなく、判断を止める仕組みに変わります。
承認者が固定的に増え続ける
一度増えた承認ルートは減ることがなく、組織の成長とともに自動的に増加していきます。
承認の目的が定義されていない
なぜこの承認が必要なのか、何を確認するための承認なのかが明確になっていません。
判断者と承認者が混在している
誰が最終的に判断するのか、承認者は何を確認するのかの役割分担が曖昧です。
判断者を設計した組織で起きる変化
承認を増やす代わりに、判断者を明確に設計した組織では、次の変化が起きます。承認は、判断を支える補助線に戻ります。
01
決断が早くなる
判断者が明確なため、意思決定のスピードが向上します。
02
失敗が検証できる
責任の所在が明確なため、失敗の原因を特定できます。
03
改善が積み上がる
検証結果を次の判断に活かせる構造が生まれます。
よくある誤解を解く
誤解①:承認を増やさないと統制が取れない
統制が取れない原因は、承認不足ではありません。判断基準がない、判断者が不明なことが本当の原因です。承認の数を増やしても、この問題は解決しません。
誤解②:合議制の方が安全
合議制は一見安全に見えますが、責任が分散し、学習が止まるというリスクを伴います。誰も責任を取らない構造は、長期的には組織を弱体化させます。
この判断で、最後に確認したい問い
承認ルートを見直す前に、次の3つの問いに答えてみてください。これらに答えられない場合、承認ルートが衰退構造を作っている可能性があります。
1
この承認は、誰のために存在しているか
組織のため?承認者のため?それとも判断者のため?目的が明確でなければ、承認は形骸化します。
2
判断者は明確に定義されているか
最終的に誰が決めるのか、その人の権限と責任は明確か。曖昧な場合、誰も決められません。
3
失敗時に検証できる構造か
失敗したとき、なぜその判断になったかを追跡できるか。検証できなければ、改善もできません。
承認と判断の違いを理解する
承認の役割
  • 判断を支える補助線
  • リスクの確認
  • 専門的な視点の提供
  • 透明性の確保
承認は判断を助けるものであり、判断そのものではありません。
判断の役割
  • 最終的な意思決定
  • 責任の所在の明確化
  • 方向性の決定
  • 学習の起点
判断者が明確であることが、組織の成長につながります。
まとめ:組織を強くするのは判断の明確さ
承認ルートの増加は善意から始まる
失敗を避けたい、責任を分散したいという思いは自然なものです。
善意が責任回避構造に変わると衰退が始まる
承認が増えすぎると、誰も決められない、誰も責任を取らない組織になります。
問題は承認の数ではなく、判断構造
承認を減らすことではなく、判断者を明確にすることが本質的な解決策です。
組織を強くするのは、承認の厚みではなく、判断の明確さ。それが、この判断パターンの核心です。